こんにちは、本多です。

これまでにいくつか秋の句を紹介してきましたが、
ここでひとつ、
自分で考えた秋の句を一つ挙げてみたいと思います。

夏の暑さが落ち着き、
涼しさが心地よくなった秋の夜に誘われて
蟷螂(カマキリ)が草むらから夜道に出てきたのだけれど、
そこで何かに気付いた様子を見たので句にして表してみました。

蟷螂が 首をかしげた 暗き道

どうしたのでしょう?
夜道で道に迷っちゃったのか?
季節の移り変わりを感じたのか?
そこで何かを発見したのかな?と
考えさせられる情景でした。
それでは、
今回は腹證奇覧に掲載しております、
半夏瀉心湯についてです。

半夏瀉心湯

半夏瀉心湯
半夏瀉心湯

図の如く、
心下痞満して、之を按すに硬くして痛まず、
嘔して腸鳴するものを半夏瀉心湯の證とす。
其の鳴るもの、宛も、雷の如く鳴り走る以て、
又、之を雷鳴という。
雷鳴は、熱、其の水を激動するなり。
多くは胸中より、中脘臍上までの間、
腸鳴痞痛して、やがて大便瀉するもの、之を熱瀉とす。
又、病人、食すると忽ち、箸を置く間に泄瀉せんと欲するもの、
亦、此の方の證あり。
然れども、腹診を詳かにして、之を用うべし。
下脘已下、臍をめぐり、脇下腰間に雷鳴切痛し、
或は、嘔し、或は瀉するもの、
附子粳米湯の證なり。是れ寒疝なり。
必ず腹中腰間、冷気を覚え、且つ心下痞硬せず。
是れ其の別なり。
又、姜桂棗草黄辛附湯の證、心下硬、水気転鳴す。
此の證、嘔せず下痢せず、水気に似て水気にあらず、
冷気遊走するなり。二編に詳かなり。
併わせ読むべきなり。
或は曰く、世に積と名づけて、
心下にさしこみ、按して甚だしく痛むもの。
是れ痞痛なり。甚だしき者は、
心下へさしこみ、反張して手足けいじゅう瘈(疒 + 從)するもの。
此の方を用う。若し応ぜざるものは、
白虎加黄連。更に応ぜざるものは、大柴胡加芒硝湯を用う。
愚案ずるに、既に胸中にせまるものは、風引湯の證あるべし。
又、左の脇下にさしこむもの、
桃核承気湯の證なり。
此の方は、黄芩ありて胸中の熱を去るを以て、
亦、瀉心の名あり。然れども、其の多きものは水なるを以て、
半夏を主として水を去り、干姜を伍して結を散じ、
人参を伍して胃の口を開き、甘草・大棗・攣(ひっぱり)
をとき急を緩む。相和して胸中の熱を退け、
水気を逐うを以て嘔を治し、心下の痞を去るなり。


【半夏瀉心湯:組成】

半夏(はんげ)

半夏
半夏

サトイモ科のカラスビシャクの塊茎。
性味:辛・温・有毒
帰経:脾・胃

主な薬効と応用:鎮静・鎮咳・去痰
①燥湿化痰:湿痰の咳嗽・多痰・胸苦しさ、或いは痰濁上擾による
眩暈・不眠・悪心などの症候時に用いる。
方剤例⇒二陳湯

②降逆止嘔:胃寒・胃熱・胃虚による嘔吐時に用いる。
方剤例⇒胃寒による嘔吐→小半夏湯
胃熱による嘔吐→黄連橘皮竹筎半夏湯
胃虚による嘔吐→大半夏湯

③消痞散結:痰熱による心窩部の痞えなどに用いる。
方剤例⇒半夏瀉心湯

備考:辛散温燥のため、陰虚の燥咳・傷津の口渇・出血には用いてはならない。



黄芩(おうごん)

黄芩
黄芩

シソ科のコガネバナの周皮を除いた根。
性味:苦・寒
帰経:肺・脾 ・大腸・小腸・胆

主な効能と応用:
①清熱燥湿:湿温・暑温初期の湿熱欝阻気機による、
胸苦しい・腹が張る・悪心・嘔吐・尿が濃いなどの症候に用いる。
方剤例⇒黄芩滑石湯

②清熱瀉火・解毒・凉血:肺熱の咳嗽・呼吸促迫・黄痰などの症候時に用いる。
方剤例⇒清肺湯

③清熱安胎:妊娠中の蘊熱による下腹痛などに用いる。
方剤例⇒当帰散

備考:他薬の配合により様々な効用を示す。
柴胡と往来寒熱を除き、白芍と下痢を抑え、桑白皮と肺火を除き、
白朮と安胎に働き、山梔子と胸膈火熱を除き、荊芥・防風と肌表の熱を清解する。



乾姜(かんきょう)

乾薑
乾薑

ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
性味:大辛・大熱
帰経:心・肺・脾・胃

主な薬効と応用:解熱・鎮痛・鎮咳・抗炎症
①温中散寒:脾胃虚寒で腹が冷えて痛む・腹鳴・
不消化下痢・嘔吐などの症候時に用いる。
方剤例→理中湯

②回陽通脈:陽気衰微・陰寒内生による亡陽虚脱で、
四肢の冷え・脈が微弱などの症状時に用いる。
方剤例→四逆湯

③温肺化痰:肺の寒陰による咳嗽・呼吸困難・
希薄な多量な痰・背部の冷感などの症候時に用いる。
方剤例→小青竜湯

備考:辛熱燥烈のため、陰虚内熱・妊婦には禁忌とする。



人参(にんじん)

人参
人参

ウコギ科のオタネニンジンの根。
性味:甘・微温・微苦
帰経:肺・脾

主な薬効と応用
①補気固脱:大病・久病・大出血・激しい嘔吐などで、
元気が虚衰して生じるショック状態時に用いる。
方剤例⇒独参湯

②補脾気:脾気虚による元気がない・疲れやすい・食欲不振、
四肢無力・泥状~水様便などの症候時に用いる。
方剤例⇒四君子湯

③益肺気:肺気虚による呼吸困難・咳嗽、
息切れ(動くと増悪する)・自汗などの症候時に用いる。
方剤例⇒人参胡桃湯

④生津止渇:熱盛の気津両傷で高熱・口渇・多汗、
元気がない・脈が大で無力などの症候時に用いる。
方剤例⇒白虎加人参湯

⑤安神益智:気血不足による心身不安の不眠・動悸、
健忘・不安感などの症候時に用いる。
方剤例⇒帰脾湯

備考:生化の源である脾気と
一身の気を主る肺気を充盈することにより一身の気を旺盛にし、
大補元気の効能をもつ。すべての大病、
久病・大出血・大吐瀉による元気虚衰の
虚極欲脱・脈微欲脱に対して最も主要な薬物。



炙甘草(しゃかんぞう)

甘草
甘草

マメ科のウラル甘草の根。
性味:平・甘
帰経:脾・肺・胃

主な薬効と応用:去痰・鎮咳・抗炎症
①補中益気:脾胃虚弱で元気がない・
無力感・食欲不振・泥状便などの症候に用いる。
方剤例⇒四君子湯

②潤肺・祛痰止咳:風寒の咳嗽時に用いる。
方剤例⇒三拗湯

③緩急止痛:腹痛・四肢の痙攣時などに用いる。
方剤例⇒芍薬甘草湯

④清熱解毒:咽喉の腫脹や疼痛などに用いる。
方剤例⇒甘草湯

⑤調和薬性:性質の異なる薬物を調和させたり、偏性や毒性を軽減させる。
備考:生用すると涼性で清熱解毒に、密炙すると温性で補中益気に働く。



黄連おうれん)

黄連
黄連

キンポウゲ科のオウレン属の根茎。
性味:苦・寒
帰経:心・脾・肝・胆・胃・大腸

主な薬効と応用:健胃・利胆・鎮痙
①清熱燥湿:大腸湿熱の下痢・裏急後重などに用いる。
方剤例⇒芍薬湯

②清熱瀉火:熱入心包の高熱・意識障害・うわごと・
煩燥などの症候時に用いる。
方剤例⇒牛黄清心丸

③清熱解毒:熱毒による高熱・煩燥・目の充血・腫痛・
咽喉腫痛・皮下出血・嘔吐などの症候に用いる。
方剤例⇒黄蓮解毒湯

備考:苦寒のため、多量を用いると胃を損傷する。
湿熱や実火でないものや脾胃虚寒には禁忌である。



大棗(たいそう)

大棗
大棗

クロウメモドキ科の棗(なつめ)の果実。
性味:温・甘
帰経:脾

主な薬効と応用:鎮静・抗アレルギー
①補脾和胃:脾胃虚弱の倦怠無力・食欲不振・泥状便などの症状に用いる。
方剤例⇒六君子湯

②養営安神:営血不足による不眠・不安感などに用いる。
方剤例⇒甘麦大棗湯

③緩和薬性:薬力が強力な薬物に配合し、性質を緩和し脾胃の損傷を防止する。
方剤例⇒十棗湯

備考:湿盛の脘腹脹満・食積・虫積・齲歯・痰熱咳嗽などには禁忌となる。



【半夏瀉心湯:効能】

【条文149】
「傷寒五六日、嘔而發熱者、柴胡湯證具、而以他藥下之、
柴胡證仍在者、復與柴胡湯、
此雖已下之、不爲逆、必蒸蒸而振、却發熱汗出而解、
若心下滿而鞭痛者、此爲結胸也、大陥胸湯主之、
但滿而不痛者、此爲痞、柴胡不中與之、宜半夏瀉心湯。」

傷寒五六日嘔して発熱するものは、
柴胡湯証具わり、而るに他薬を以て之を下し、
柴胡証仍在るものは、復た柴胡湯を与う。
此れ已に之を下したりと雖も、
逆と為さず、必ず蒸蒸として振い、
却って発熱し汗出でて解す。
若し心下満して鞭痛するものは、此れ結胸を為すなり。
大陥胸湯之を主る。但だ満して痛まざるものは、
此れ痞と為し、柴胡は之を与うるに中らず、半夏瀉心湯に宜し。

傷寒5〜6日頃に一般に病は少陽に内伝する。
嘔而發熱とは小柴胡湯の主証なので、
小柴胡湯で和解少陽を行えばよい。
しかし誤って他薬で下法を行えば以下の病証が出現する。

誤って下したあとに、柴胡湯証が残る場合で、
誤下でも変化が残らなかったのだから、
治療は小柴胡湯を用いて枢の働きを高め、
少陽の邪を解いていけばよい。

誤下で、正気が消耗されて邪に抵抗する力が不足すれば、
正気は薬力の助けを得ながら、邪気を表に致らせ追いだしていく。
この時、戦汗が起こり病は治っていく。

誤下のあと熱邪が内陥して、心窩の水飲と衝突・結合して
大陥胸証となる場合で、心窩硬満して
押圧すれば痛むほどの症状が見られれば、
大陥胸湯を用いて瀉熱・開結・逐水を行っていけばよい。

誤下のため、少陽の熱邪が内陥したため、
中焦が虚し気機の昇降が失調して、裏に実邪が無い場合
それは邪が中焦の気機を滞らせたからであり、
心窩満があるが押圧しても痛まないという症状が現れる。
治療は半夏瀉心湯で中焦に寒熱が
阻結し痞閉しているのを除き、
上逆により嘔吐しているのを治し、
胃気を益して中焦を安定させていくのである。

半夏瀉心湯について為沢先生の【傷寒論】の記事は↓こちらをご覧ください。

【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(下)百四十九章


参考文献:
『生薬単』 NTS
『漢方概論』 創元社
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『傷寒雑病論』
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会

画像:
『腹証奇覧 正編2巻・後編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004914

画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。


本多

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