山梔子
山梔子

張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は
弁少陰病脈証并治 二百九十五章・二百九十六章・二百九十七章。
二百九十五章では、少陰病で純陰無陽の危候について。
二百九十六章では、少陰病で陰盛陽脱の危候について。
二百九十七章では、少陰病で孤陽上脱の危候について
それぞれ詳しく述べております。


二百九十五章

少陰病、惡寒身踡而利、手足逆冷者、不治。

和訓:
少陰病、悪寒し身踡りて利し、手足逆冷するものは、治せず。


少陰病、惡寒身踡而利、手足逆冷者、不治
少陰腎の元陽は人身の陽気の本であるから、
少陰病の不治危証は元陽の虚脱、陽生の無根を直接病因とする。

陽虚なので悪寒をする。
そして甚だしければ身踡し、腎陽が生じなければ
脾陽も共に下陥して下痢を生じるようになる。
このように陰寒の程度が極度に強まっても、
手足がまだ温かければ、陽はまだ存在しているので
わずかではあるが助かる可能性がある。

しかし手足が冷たければ
手足は末端より逆上しているのである。
これは中焦の陽気がすでに亡脱し、
穀気が末端まで至らず、
陽を生じる源がすでに崩壊したからである。
この場合、助かる可能性はなく不治である。

提要:
少陰病で純陰無陽の危候について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、悪寒して身体を丸めて臥床し、
また下痢があり、さらに手足が逆冷している場合は、不治の証に属する。


二百九十六章

少陰病、吐利燥煩、四逆者死。

和訓:
少陰病、吐利して煩燥し、四逆するものは死す。


少陰病、吐利燥煩、四逆者死
少陰病で嘔吐、下痢をするのは、
真陽および中焦土も虚して陰寒内盛になっているからである。
”燥”は手足をみだりに動かして精神が落ち着かない症状で
陰症を示し、”煩”は胸中に熱があり、
気分が落ち着かない症状で陽症を示す。
つまり「燥煩」は陰燥の症状が陽煩の症状よりも
顕著に出現する、陰が陽よりも勝る症状なのである。
このように陰陽のバランスが取れないと、
精神は不安定となり亡神する。
生陽する根元の気機、及び中焦土の機能もすべて失われるので
手足が厥冷となる。従って病は不治である。

提要:
少陰病で陰盛陽脱の危候について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、嘔吐と下痢があり、
燥煩して不穏で、四肢が逆冷していれば、死証である。


二百九十七章

少陰病、下利止而頭眩、時時自冒者死。

和訓:
少陰病、下利止みて頭眩し、時時自ら冒するものは死す。


少陰病、下利止而頭眩、時時自冒者死
少陰病で陽微寒甚となり、下痢をしている。
虚寒下痢に限度はないのだが、
それが止まるのは陰竭になったからである。
それにより陽気が虚してよりどころを失い、
独り上方で浮遊しているので頭がクラクラし、
甚だしい時には常にめまいが起こるようになる。
これは陰竭、陽脱の危険な症状なので、
このような場合も治療はもうできない。

提要:
少陰病で孤陽上脱の危候について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、下痢が止まった後にめまいがして、
しばしば意識もうろうとなるものは、
陰陽が上下に分離した状態で、死証である。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:為沢 画

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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