【大壮】
大壮は消息卦の一つであり、
二月をあらわす。
消息卦とは・・
一年の陰陽の消長(=消息)を卦で表現したもの。
———————————————————————————
大壮。利貞。
→大壮は、貞(タダ)しきに利あり。
『大』は陽を指し、『壮』は盛んなことを指す。
陽の爻が四つあり、勢いが盛んな様子を現してはいるが
ただし、その貞(タダ)しさを固守することを条件としている。
貞(タダ)しさから外れることがあれば、
ただただ勢いのみで乱暴に陥ると説かれている。
勢いがある時はついつい調子に乗ってしまうものだが、
そんな時こそ自らを戒める必要がある。
———————————————————————————
象曰。雷在天上大壮。君子以非禮弗履。
→象に曰く、雷の天上にあるは大壮なり。
君子以て礼にあらざれば履まず。
大壮の下の卦は『乾』、上の卦は『震』。
これは『雷(震)』が『天(乾)』の上にあることを現す。
老子曰く
「自ら勝つ者は強し」とあるように、
自分に勝つことで、本来の壮(ツヨ)さを得ることが出来る。
そのためには礼に背くような行動は絶対にしないこと、
そのことが己に克つことにつながる。
———————————————————————————
下から三番目の「九三」(九は陽爻、三は下から数えた時の位を意味する)
に着目してみる。
九三。小人用壮。君子用罔。貞厲。羝羊觸藩。羸其角。
象曰。小人用壮。君子罔也。
→九三は、小人は壮を用い、君子は用いること罔(ナ)し。
貞(タダ)しけれど厲(アヤウ)し。羝羊(テイヨウ)藩(マガキ)に触れて、その角を羸(クルシ)ましむ。
九三の位置は、
下から数えて、陽爻が三つも重なり、
壮んなうえにも、さらに壮んな状態である。
小人は、このひたすら壮んな状態を用いてただただ突進する。
君子は、自分に勝つことを心掛けるためそのようなことはしない。
この爻は、他人に勝とうとして過度に壮んな力を用いると、
事は正しくても、結果は危うい。
たとえれば、
牡(オス)の羊が暴走して生け垣に頭を突っ込み、
角をいばらに引っかけて困っているようなことである。
———————————————————————————
陽爻が下から四つ並び、
一見勢いがあって吉かと思いきや、
その勢いの分、戒め、自制が必要な事を教えてくれる。
参考文献:
『易経 上』
『易経 下』 岩波文庫
『易』 朝日新聞出版
『易とはなにか』 DCS出版社
『中国宗教思想1』
『中国宗教思想2』岩波書店
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版
『鍼灸医学事典』 医道の日本社
新川