こんにちは、本多です。
今回も秋を感じさせる一句から紹介致します。

「秋 来 ぬ と  目 に は さ や か に  見 え ね ど も
・・・・・・・・・・・
風 の 音 に ぞ  お ど ろ か れ ぬ る」(藤原 敏行)

今から1000年以上も前、
作者が立秋の頃に風の音を聞いて詠んだ一句とされています。
立秋とは現在でいう8月7日、8月8日頃をさすのですが、
陽が燦々と降りそそぐ時期に秋を感じられたことに驚きです。

それでは、
今回は腹證奇覧に掲載しております、
梔子鼓湯についてです。

梔子鼓湯

梔子豉湯
梔子豉湯

図の如く、 心胸に結聚するものあって、
指頭を以て骨間を探按するに痛み、 心下は、鳩尾より下臍上までの間、
之を按すに、濡弱にして物なきがごとく、 腹底までこたえるものなく、
くさくさとするもの、 梔子鼓湯腹證の顕然たるものなり。
而して、胸中煩熱して眠ることを得ず、 劇しきものは、
煩悶安からずして、反覆顚倒、 心中懊憹す。或は、身熱手足温、
或は胸窒ぎて食すること能わず、或は結痛す。
皆、病、心胸に聚りて、 煩するものは、之を心下に候うに必ず痞す。
或は、之を按して濡なりといえども、
腹底に至って必ず凝るもの、あるべし。


【梔子鼓湯:組成】

山梔子(さんしし)

山梔子
山梔子

アカネ科のクチナシ、またはその他同属植物の成熟果実、
球形に近いものを山梔子、細長いものを水梔子という。
性味:苦・寒
帰経:心・肺・肝・胃・三焦

主な薬効と応用:
①清熱瀉火・除煩:外感熱病の胸中が熱苦しく不快、
不眠などを呈するときに用いることができる。
方剤例⇒梔子鼓湯

②清熱利湿:湿熱の黄疸時に用いることができる。
方剤例⇒五淋散

③清熱凉血:血熱妄行の吐血・鼻出血・血便、
血尿・皮下出血などに用いることができる。
方剤例⇒梔子金花丸

④清熱解毒:熱毒による瘡癰(皮膚化膿症)に用いることができる。
方剤例⇒清上防風湯 備考:苦寒で脾陽を損傷しやすいので、
脾虚の軟便や下痢傾向のものには用いない。



淡豆鼓(たんとうし)

淡豆鼓
淡豆鼓

マメ科のダイズの成熟種子を蒸して発酵加工したもの。
性味:辛・甘・微苦、凉あるいは微温
帰経:肺・胃

主な薬効と応用:
①疏散解表:外感風寒の発熱・悪寒・頭痛、
無汗などの症候時に用いることができる。
方剤例⇒葱鼓湯

②宣欝除煩:熱病後の胸中余熱残存で胸が苦しく気分が悪い、
不眠などの症候時に用いる。
方剤例⇒梔子鼓湯


【梔子鼓湯:効能】

傷寒論には以下のような記載がみられます。

【条文76】
「發汗後、水藥不得入口爲逆。
若更發汗、必吐下不止。
發汗吐下後、虛煩不得眠、 若劇者、
必反覆顛倒、心中懊儂、梔子豉湯主之。」

「發汗して後、水藥口るをざるは
發汗せば、必吐下してまず
發汗吐下して後、虛煩して しき
反覆顛倒、心中懊儂、梔子豉湯之。」

発汗法を行った後に病人が水や薬を受け付けなくなったのは、
発汗のやり方が不適切の為に、
「胃気が損傷」された事を示す。
順調ではない経過の為、「逆」と表現されている。
ここで更に発汗を行うと更に胃気を損傷するので 嘔吐と下痢が止まらなくなってしまう。
汗・吐・下法を行った後、煩悶して眠れないのは実邪は去ったが、
余熱が除かれずに胸郭に内陥して鬱滞していることをあらわす。
これがさらにひどくなると、病人は熱のためにじっとしていることが 困難になるので、
このような場合は梔子豉湯が主治すると述べられいる。



【条文77】
「發汗若下之、而煩熱胸中窒者、梔子豉湯主之。」

「発汗若しくは、而して煩熱して胸中窒るものは、梔子豉湯之。」

前文を承けて発汗法や瀉下法を行った後も 邪熱が胸中に鬱滞して、
76条の「顛倒、心中懊儂」より強い症状を表すが、
この場合も梔子豉湯を用いると述べられている。

【条文78】
「傷寒五六日、大下之後、身熱不去、
心中結痛者、
未欲解也、梔子豉湯主之。」

「傷寒五六日、大いにして後、身熱去らず
心中結痛するものは
せんとせざるなり。梔子豉湯之。」

「身熱去らず」は条文77条と同じく邪熱が胸中に鬱滞している状態を表す。
傷寒にかかり五、六日が経ち、 すでに猛峻な薬にとる攻下法で治療したが、
邪熱がまだとれず、そのうえ胸に詰まった感じがして痛む場合は、
病は除かれていなことを表す。
この場合は前条文よりさらに重篤となった状態だが
梔子豉湯を用いて治療することができる。

以上のことから、 梔子豉湯は 胸膈欝熱に対して清熱除煩の効能がある。
梔子豉湯について為沢先生の【傷寒論】の記事は↓こちらをご覧ください。

【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)七十六章
【古医書】傷寒論を読む: 弁太陽病脈証并治(中)七十七章・七十八章


参考文献:
『生薬単』 NTS
『漢方概論』 創元社
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『傷寒雑病論』
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会

画像:
『腹証奇覧 正編2巻・後編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004914

画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

本多

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here