石膏
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張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁少陰病脈証并治 二百八十六章・二百八十七章・二百八十八章。
二百八十六章・二百八十七章・二百八十九章。
二百八十六章では少陰病で汗下法を行ってはいけない場合の脉証について。
二百八十七章では少陰病が自然に治るときの脉証について。
二百八十八章では少陰病で胃気が健全で衰えていなければ必ず治ることなど、
それぞれ詳しく述べております。


二百八十六章

少陰病、脉微、不可發汗、亡陽故也、
陽已虚、尺脉弱濇者、復不可下之。

和訓:
少陰病、脉微なるものは、発汗すべからず、亡陽するが故なり。
陽已に虚し、尺脉弱濇なるものは、復た之を下すべからず。


少陰病、脉微
少陰は気血生化を主るが、
そのうち心は血脈を主り、腎気を主る。
少陰病で脈微が出現するのは、
元陽が不足して陽気を充分表に達せられることができないからである。

不可發汗、亡陽故也、陽已虚
このとき、発汗法を行うと汗に従って陽が脱し、
陽虚がさらに甚だしくなって亡陽となる。
従って発汗法は禁忌である。

尺脉弱濇者、復不可下之
尺中の弱濇は、裏虚で陰血をおびやかして涸渇、
亡陰にさせる恐れがあるから、攻下法は禁忌なのである。
少陰病で陰陽ともに虚している場合は
発汗法も攻下法も行ってはいけない。

提要:
少陰病で汗下法を行ってはいけない場合の脉証について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、脉が微である場合は、発汗法を用いることはできない。
それは発汗法によって亡陽がおこるからだ。
陽気がすでに虚し、そして尺脉が弱渋である場合は、
攻下を行うこともまた禁忌である。


二百八十七章

少陰病、脉緊、至七八日自下利、
脉暴微、手足反溫、脉緊反去者、爲欲解也。
雖煩、下利、必自愈。

和訓:
少陰病、脉緊、七八日に至り、自ら下利し、
脉暴(にわか)に微、手足反って温かく、
脉緊反って去るものは解せんと欲すと為すなり。
煩して下利すと雖も、必ず自ら愈ゆ。


少陰病、脉緊、至七八日自下利、
脉暴微、手足反溫、脉緊反去者、爲欲解也

少陰病で脉緊を示し、手足が厥冷なのは、
内で陰寒が凝滞して陽虚内閉になっているからである。
その後7〜8日経って下痢をし、脈が突然緊から微に変わったり、
手足も温かくなるは、胃腸はまだ衰えず時を得て
外達することができたからである。
少陰の陽が回復するので
「自下利」「緊反去」等の症状がでるため
「為欲解」という。

雖煩、下利、必自愈
「煩」は熱証に属す。
この煩は陽気が突然集まって回復したことによるものである。
そして寒の凝滞が解けて温かくなると「下利」は必ず出現するが
寒邪が去れば下痢は、自然に止まり、煩も治っていくので
「必自愈」と述べている。

提要:
少陰病が自然に治るときの脉証について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、脉は緊であるが、第七・八日になった頃、
下痢が現れ、脉象が突然に微に変化した。
しかし手足は冷えていたのにかえって温かくなった。
緊脉が理に反して消退する場合は、病証がやがて改善することを示唆し、
心煩や下痢などの証があっても、まもなく自然に治癒する。


二百八十八章

少陰病、下利、若利自止、惡寒而踡臥、手足溫者、可治。

和訓:
少陰病、下利し、若し利自ら止まば、
悪寒して踡臥すれども、手足温かきものは、治すべし。


少陰病、下利、若利自止、惡寒而踡臥、手足溫者、可治
少陰病で腎脾が共に虚しているので、
陽虚下陥となって下痢が出現している。
仮に下痢は止まっても悪寒と踡臥(けんが・四肢を折り曲げて横臥すること)
があれば、これは陽虚が極まって陰寒が甚だしく、
全身に覆い被さったようになっているからである。
「利自止」は陽気の回復が充分でなく、しかも津渇で、
真陽が欲脱しようとしている危険な状態である。
しかし「手足溫」であれば、幸いなことに
胃気はまだ衰えていないので、
陽気を回復させて病を治していくことはできる。

提要:
少陰病で胃気が健全で衰えていなければ
必ず治ると述べている。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹って、下痢していても、もし下痢が自然に止まるなら、
悪寒がひどくて身体を丸めて臥床していても
手足が温かくなってさえいれば、治癒させることが判断させることができる。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:為沢 画

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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