絶学無憂。
唯之與阿、相去幾何。
善之與悪、相去何若。
人之所畏、不可不畏。
荒兮、其未央哉。
衆人煦煦、如亨太牢、如春登臺。
我獨怕兮、其未兆、如嬰兒之未孩。
儽儽兮、若無所歸。
衆人皆有餘、而我獨若遺。
我愚人之心也哉。沌沌兮。
俗人昭昭、我獨若昬。
俗人察察、我獨悶悶。
澹兮、其若海、飂兮、若無止。
衆人皆有以、而我獨頑似鄙。
我濁異於人、而貴食母。

———————————————————————————

学ぶことをやめれば、憂いがなくなる。
ハイと、コラと、どれほどの違いがあろうか。
美しいのと醜いのと、どれほどの違いがあろうか。
人々が恐れることは、
恐れないわけにはいかない。
(道のありさまは)ひろびろとして、どこまでいっても果てしがない。
誰もがみな浮きうきとして、宴席の最高のごちそうを楽しむかのよう、
春の高台に登って景色を眺めるかのよう。
ただわたしだけが、ひっそりとして何の気持ちも起こさず、
まだ笑いもしない赤子のよう。
くたびれて、帰る家さえない者のよう。
誰もがみなゆとりがあるのに、
それなのにただわたしだけが、貧しい人のよう。
わたしは、心愚かなことよ、何も分からぬ。
世間の人々は眩いことよ、ただわたしだけが薄ぼんやりだ。
世間の人々は目端が利くことよ、ただわたしだけがぼーっとして大まかだ。
静かなことよ、海のようだ。
強い風が吹くように、止まることがないようだ。
誰もがみな有能であるのに、
それなのにただわたしだけが、鈍くて田舎くさい。
ただわたしだけが人々と違って、
道という乳母を大切にしたいと思っている。

 

『老子 峰屋邦夫訳注/岩波文庫』より抜粋
———————————————————————————
学ぶことから、その先へ


返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here