こんにちは、大原です。
さて、前回は、
「少陽病」とはどのようなものかについて、
また、少陽病に対しては
小柴胡湯を用いるということを述べました。
今回は、小柴胡湯と似た名前の
「大柴胡湯」を用いる場合についてです。
傷寒論 条文103条では、
少陽病に「陽明腑証」が併存する場合には
大柴胡湯を用いるとあります。
(【古医書】傷寒論: 弁太陽病脈証并治(中)百三章・百四章)
ここで、陽明腑証とは、
胃の腑に実熱がたまり、
発熱、口渇、便秘など熱の症状をきたすもので
陽明病腑実証ともいい、
大承気湯が主治するとされています。
(ちなみに、陽明腑とは胃の腑(胃袋)のことを指します。)
条文103条に記載されている
「少陽病に『陽明腑証』が併存する場合」とは、
少陽病で、「心下急」(心下部の緊張・痛み)や
胸中煩悶といった症状が現れた場合をいいます。
これは、風寒邪が少陽から陽明腑にも伝入して
胃中に邪熱が結実したことを示すとされています。
少陽からの実熱が胃中たまった場合、
実熱証である陽明腑証の症状があらわれます。
■組成(『中医臨床のための方剤学』より)
・小柴胡湯(参考)
柴胡:15g、黄芩:9g、人参:6g、半夏:9g、炙甘草:6g、生姜:9g、大棗:6g
・大柴胡湯
柴胡:15g、黄芩:9g、白芍:6g、半夏:9g、生姜:12g、桔実:9g、大棗:4g、大黄:6g
このように、大柴胡湯は、
小柴胡湯から人参・甘草を除き、
代わりに白芍・桔実・大黄を加え、
生姜の量を多く配合したものです。
大柴胡湯に加えられた
各生薬のはたらきは以下のようになっています。
・桔実、大黄 → 胃中の実熱を瀉下・排泄
・白芍 → 肝胆と脾胃の調和を図る・緩急止痛
・大黄 → 陽明腑実の病を治す主薬としての第一薬
・生姜 → 半夏を助けて強い嘔気を止めるなど
少陽病に対する治法は
基本的に和解法が用いられますが、
大柴胡湯は、陽明腑証にも効くことから
瀉下法とするという考え方もあるようです。
次回に続きます。
参考文献:
『基礎中医学』 燎原
『傷寒論を読もう』 東洋学術出版社
『中医臨床のための方剤学』 神戸中医学研究会
*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。
大原