下野です。
現在 東京で開催中の
『ルーブル美術館展』が
6月から京都市美術館でも開催されます。
中でもフェルメールの「天文学者」は
ルーブルを離れることが滅多とない作品で、
今回が初来日の為 混雑が予想されます。
人混みは苦手ですが、
これは見に行こうと思っております!
では『薬性の歌』に参ります。
【原文】
当帰性温、生血補心、扶虛益損、逐瘀生新。
頭、主血上行、身,養血中守、尾、破血下流、全、活血不走。
酒浸洗浄。体肥痰盛、姜汁浸、晒乾用。
川芎味温、能止頭疼、養生新血、開鬱上行。
不宜単服、久服令人暴亡。
白芍酸寒、能收能補、瀉痢腹疼、虛寒勿用。
下痢用炒、後重用生。
赤芍酸寒、能瀉能散、破血通経、産後勿犯。
生地微寒、能清湿熱、骨蒸煩労、兼消瘀血。
勿犯鉄器、忌三白。姜汁浸炒、不泥膈痰。
熟地微温、滋腎補血、益髓填精、烏髭黒髮。
酒浸蒸用。勿犯鉄器、忌三白。
<第三に続く>
【解説】
当帰の性は温。
補血作用で心を補い、
虚を助け、
活血作用で瘀血を駆す。
帰頭部は補血、帰身は養血、帰尾は破血、
全用は活血する。
酒に浸し洗浄するが、
体が肥えて痰盛の者には、姜汁に漬け晒した物を用いる。
川芎の味は温。
止痛作用で頭痛を止め、
活血行気作用で、
血を養い鬱を捌く。
単服は控え、辛温昇散に働く為、
過量は真気を乱し、急死に至る。
白芍は酸、寒。
柔肝、補血する。
瀉利、腹疼、虚寒の者には与えてはいけない。
下痢には炒用し、裏急後重には生用にする。
赤芍は酸、寒。
熱を瀉し、瘀滞を散じ、
血を破って経を通じさせる。
生地黄は微、寒。
清熱滋陰作用で、
湿熱、骨蒸、煩労を清す。
また兼ねて瘀血を消す。
ネギ、ニラ、大根との併用は禁じる。
熟地黄は微、温。
滋腎、補血し、
また生精補髄し、
髭、髪を黒くする。
酒に浸し、蒸して用いる。
ネギ、ニラ、大根との併用は禁じる。
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◉当帰
セリ科の根をいう。
根頭部を帰頭、主根部を当帰身、支根を当帰尾、
帰身と帰尾を含めて全当帰という。
性味:甘・辛・苦・温
帰経:心・肝・脾
※本多先生による解説はこちら→当帰芍薬散/腹證奇覧
当帰は血病の要品とされ、
血虚・血滞問わずに主薬で用いられ、
婦人科の良薬と考えられている。
その為欧米諸国では、
強壮薬の中で最も人気があるようです。
◉川芎
セリ科のマルバトウ属植物の根茎。原名は芎藭
性味:辛・温
帰経:肝・心包・胆
※本多先生による解説はこちら→当帰芍薬散/腹證奇覧
別名「四川ラビジ」と言われ、
ヨーロッパで料理用ハーブとして
使用されるラビジの仲間のようです。
※ラビジ(ラベージ)
セリ科、セリ亜科の多年生植物。
葉はハーブ、種はスパイス、根は食用となるようです。
◉白芍
ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し、
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。
性味:苦・酸・微寒
帰経:肝・脾
※本多先生による解説はこちら→当帰芍薬散/腹證奇覧
白芍(芍薬)の学名「Paeonia(パエオニア)」は
ギリシア神話で黄泉の国の神の傷を治した
医の神「Paeon(ペオン)」に由来している。
◉赤芍
ボタン科のベニバナヤマシャクヤク、シャクヤクの根。
性味:苦・微寒
帰経:肝
効能
①清熱涼血:熱入営血の夜間発熱、皮下出血、吐血、鼻血など。
方剤例→犀角地黄湯
②祛瘀止痛:血瘀による腫瘤や産後の瘀滞による腹痛。
方剤例→桂枝茯苓丸
③清肝泄火:肝火による目の充血、痛み。
方剤例→石決明散
◉生地黄
ゴマノハグサ科のジオウや、カイケイジオウの肥大根。
性味:甘・苦・寒
帰経:心・肝・腎
効能
①清熱滋陰:温熱病の夜間発熱、口乾など。
方剤例→清営湯
②涼血止血:血熱妄行による吐血、鼻血、血尿、血便など。
方剤例→四生丸
③生津止渇:熱盛傷津による口渇、口乾など。
方剤例→益胃湯
◉熟地黄
ゴマノハグサ科のジオウや、
カイケイジオウの肥大根を乾燥したのち、
酒で蒸して熟製したもの。
性味:甘・微温
帰経:心・肝・腎
※本多先生による解説はこちら→芎帰膠艾湯および猪苓湯/腹證奇覧
日本に伝来したのが8世紀頃と言われ、
最初は奈良県で栽培が始まったようです。
その名残で、奈良県橿原市には
地黄町という町名があるようです。
<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『まんが漢方入門』 医道の日本社
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
下野