こんにちは、本多です。
今回は腹證奇覧に記載している、
下瘀血湯の證の記事と
最後に一句、詩をご紹介致します。


下瘀血湯

下瘀血湯
下瘀血湯

図の如く、臍下に毒有りて、時々痛む事を覚う。
之を按ずるに実に痛むに非ず。若し之を按じていたむものは余證なり。
剤を投ずるに、臍下の診るを以って分別する者、八、九あり。
詳らかなることは下に記す。
此の證は臍下を探りみるに、
少しく指頭も応え堅きものあるを覚え、時として痛むもの、
此の方の正證なり。

余、考うるに、是大血症にして、婦人は経水通ぜず、
男子も亦、血症の者に多し。
其の人、或は腰痛久しく止まず、
或は痳疾・痔・脱肛などの患ある者あり。
或は大建中湯の證を発する者、必ず此の證多し。

下瘀血湯の方
大黄(四戔)
桃仁・䗪虫(各二戔五分)
右三味、細末にして䗪を以って練り四丸となし、
酒八分を以って一丸を六分に煎じ取りて一度に服す。
余、旧に東都にある時、一男子三十四五才。
大腹痛にて臍下痛むこと三年、百療効なしと云う。
余之を診するに、暗然として冷気を覚う。
腹皮強急して頭足があるが如し。
乃ち大建中湯を与え、一月下許りにして漸々愈ゆ。
又臍下痛むを覚え忍び難し。
乃ち下瘀血湯を与う。
数日にして全く愈ゆ。


【下瘀血湯:組成】

大黄(だいおう)

大黄
大黄

タデ科のダイオウ属植物の根茎や根。
性味:苦・寒
帰経:脾・胃・大腸・肝・心包
主な薬効と応用:緩下・駆瘀血
①瀉熱通腸:胃腸の実熱による、
便秘・腹痛・高熱・意識障害などに用いる。
方剤例⇒大承気湯
②清熱瀉火:火熱上亢による、
目の充血・咽喉の腫痛・鼻出血など上部の火熱の症候に用いる。
方剤例⇒三黄瀉心湯
③行瘀破積:血瘀による無月経や腹痛時に用いる。
方剤例⇒復元活血湯
④清火湿熱:湿熱の黄疸時に用いる。
方剤例⇒茵蔯蒿湯
備考:生用すると瀉下の働きが強くなり、
酒を吹きかけ火で焙ると上部の火熱を清し
活血化瘀の働きが強くなり、
酒とともに蒸すと瀉下の力が緩やかになり、
炒炭すると化瘀止血に働く。



桃仁(とうにん)

桃仁
桃仁

バラ科のモモやノモモなどの成熟種子。
性味:苦・甘・平
帰経:心・肝・大腸
主な薬効と応用:
①破瘀行血:血瘀による無月経・
月経痛・腹腔内腫瘤などを呈するときに用いる。
方剤例⇒桃紅四物湯
②潤腸通便:腸燥通便による便秘時に用いる。
方剤例⇒五仁湯
備考:桃仁・杏仁は止咳平喘・潤腸通便の効能をもつが、
杏仁は気分に偏し降気消痰に優れ、
桃仁は血分に偏し破瘀生新に優れている。



䗪虫(しゃちゅう)

ゴキブリ科のシナゴキブリ、サツマゴキブリなどの雌の成虫
性味:鹹・寒・小毒
帰経:肝
主な薬効と応用:
①破血逐瘀・消癥:血瘀による無月経・腹腔内腫瘍や産後瘀阻の腹痛時に用いる。
方剤例⇒大黄䗪虫丸
②統筋接骨:打撲・骨折による腫脹・疼痛に用いる。
方剤例⇒接骨方
備考:妊婦には禁忌。


【下瘀血湯:主治】

産後の瘀血腹痛や月経不順などを治する。
破血化瘀の効能がある。


本来面目(写真:本多撮)
本来面目(写真:本多撮)

鎌倉時代、
40代後半で詠ったとされる道元氏の一句です。


参考文献:
『生薬単』 NTS
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会

画像:
『腹証奇覧 後編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004918

画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。


本多

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