こんにちは、本多です。
今回は腹證奇覧に記載している、
甘麦大棗湯の證の記事を掲載致します。


甘麦大棗湯

甘麦大棗湯
甘麦大棗湯

図の如く、
胸腹満して実せず。軟と云うにも非ず。
只、一面に満し大黄甘草湯の腹證に似て、
その人騒がしく眼鋭く、時々狂を発し、
数々欠伸(のびあくび)して、或は喜び、或は悲しみ、或は笑い、
或は泣き、其の状、狐狸の憑きたるが如く、
また俗に「色狂」と云う者にも間この證あり。

甘麦大棗湯の方
甘草(六分)
小麦(三戔二分)
大棗(五分)
右三味、水一盞二分を以って六分に煮とる。
余、伝有りて云う。発狂甚だしき者は薬を服さず。
故に茶湯を止め、此の方、或は十貼を濃く煎じて、
土瓶の類を以って渇する時毎に重ね勧めて服せしめば久くして治す。


【甘麦大棗湯:組成】

甘草(かんぞう)

甘草
甘草

マメ科のウラル甘草の根。
性味:平・甘
帰経:脾・肺・胃
主な薬効と応用
①補中益気:脾胃虚弱で元気がない・
無力感・食欲不振・泥状便などの症候に用いる。
方剤例⇒四君子湯
②潤肺・祛痰止咳:風寒の咳嗽時に用いる。
方剤例⇒三拗湯
③緩急止痛:腹痛・四肢の痙攣時などに用いる。
方剤例⇒芍薬甘草湯
④清熱解毒:咽喉の腫脹や疼痛などに用いる。
方剤例⇒甘草湯
⑤調和薬性:性質の異なる薬物を調和させたり、偏性や毒性を軽減させる。
備考:生用すると涼性で清熱解毒に、密炙すると温性で補中益気に働く。



小麦(しょうばく)

イネ科のコムギの種子。
性味:甘・微寒
帰経:心・肝
主な薬効と応用:
①養心安神:心神不寧による焦燥・不安・悲しい恍惚状態・不眠・痙攣などの症候時に用いる。
方剤例:甘麦大棗湯
備考:小麦は甘・微寒で、養心安神・潤肝除燥に働くので、神志失常・煩燥不安に適する。



大棗(たいそう)

大棗
大棗

クロウメモドキ科の棗(なつめ)の果実。
性味:温・甘
帰経:脾
主な薬効と応用:鎮静・抗アレルギー
①補脾和胃:脾胃虚弱の倦怠無力・食欲不振・泥状便などの症状に用いる。
方剤例⇒六君子湯
②養営安神:営血不足による不眠・不安感などに用いる。
方剤例⇒甘麦大棗湯
③緩和薬性:薬力が強力な薬物に配合し、性質を緩和し脾胃の損傷を防止する。
方剤例⇒十棗湯
備考:湿盛の脘腹脹満・食積・虫積・齲歯・痰熱咳嗽などには禁忌となる。


【甘麦大棗湯:主治】

思慮過度による五臓の陰が消耗し心神不寧のために
ぼんやりする・よく泣く・焦燥感・眠りが浅い・あくびがよくでる、
などの臓躁の症状を治する。


参考文献:
『生薬単』 NTS
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会

画像:
『腹証奇覧 後編2巻』
京都大学貴重資料デジタルアーカイブより
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00004918

画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。


本多

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