こんにちは、為沢です。
画像は十三大橋という、十三〜梅田に架かる橋で
5連のとても美しい曲線のアーチが特徴です。
以前から気になっていたので、この橋について少し調べてみたところ
橋長:681.2m、幅員:20mの5連鋼ブレースドリブタイドアーチ橋で
昭和6年12月に完成された歴史ある橋だったんです。古いのに立派。すごいです。
で、”アーチを架ける理由は?5連にする意味は?重心を取るため?”とか色々考えちゃうんです。
関係ないかも知れませんが、こういうインスピレーションから
鍼の閃きや応用に繋がることが多々あるので、他分野の教養もとても大事だったりします。
この事がどう繋がるかはまだ分かりませんが何事も勉強になります。
ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(下)百七十三章。
傷寒時に上焦には熱邪が、下焦には寒邪が生じた場合の証治について詳しく述べております。
百七十三章
傷寒胸中有熱、胃中有邪氣、
腹中痛、欲嘔吐者、黄連湯主之。方三十五。
黄連三兩 甘草三兩、炙 乾薑三兩
桂枝三兩、去皮 人参二兩 半夏半升、洗 大棗十二枚、擘
右七味、以水一斗、煮取六升、去滓、溫服、昼三夜二。疑非仲景方。
和訓:
傷寒胸中に熱あり、胃中に邪気あり、
腹中痛み、嘔吐せんと欲するものは、黄連湯之を主る。方三十五。
黄連三両 甘草三両、炙る 乾薑三両
桂枝三両、皮を去る 人参二両 半夏半升、洗う 大棗十二枚、擘く
右七味、水一斗を以て、煮て六升を取り、滓を去り、温服し、昼に三夜に二。疑うらくは仲景の方に非ざらん。
・傷寒胸中有熱、胃中有邪氣、腹中痛、欲嘔吐者、黄連湯主之
傷寒証は本来発汗法で解かなければいけないが、
しかし裏が虚して寒がある場合、
表よりもまず裏を治療していかなければいけない。
原文の「胃中有邪氣」は、脾胃の陽が虚して水寒の邪が盛んになり
気機の昇降が正常になくなり、
陰陽がスムーズに交流していないことを指している。
上焦で火が盛んなので胸中有熱となり、
下焦で水が凝滞しているので「腹中痛」となっている。
よく嘔吐するのは、胃逆が甚だしいからである。
これらの症状は全て裏気が一定せず、
表気は閉ざして内に鬱滞することにより起きている。
この場合、治法は黄連湯を用いる。
黄連の苦の気味は降火作用があり、胸中の熱を清していく。
また人参・大棗・甘草・半夏の五味は、
脾胃の陽気を和して、気機昇降の本を固め、上下に気を巡らせる。
桂枝は下焦に気を巡らせて寒を除き、
表裏の気の交流をスムーズにさせる。
この湯液は、邪を清して、
身体を温める二法を同時に行う治法である。
黄連湯
・黄連
基原:
キンポウゲ科のオウレン、
及びその他同属植物の根をほとんど除いた根茎。
以上は日本産である。
中国産は同属の川連・味連、雅連・
峨眉連、野黄連・鳳眉連、雲連などに由来する。
黄連は大苦大寒で、寒で清熱し苦で燥湿し、
心・胃・肝・胆の実火を清瀉し、
胃腸積滞の湿熱を除き、
清心除煩・消痞・止痢に働き、湿火欝結に対する主薬である。
それゆえ、心火熾盛の煩熱神昏・
心煩不眠、肝胆火昇の目赤腫痛・羞明流涙、
胃熱の清穀善飢、腸胃湿熱の痞満嘔吐・腹痛泄瀉などの要薬である。
また、清熱泄火・解毒にも働くので、
疔毒癰腫・口舌潰瘍・湿瘡瘙痒および
迫血妄行の吐血衄血にも有効である。
・甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、
補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・
緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
・乾薑
基原:
ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
古くは皮を去り水でさらした後に晒乾した。
乾姜は生姜を乾燥させてもので
辛散の性質が弱まって
辛熱燥烈の性質が増強され、無毒であり、
温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもつ。
陰寒内盛・陽衰欲脱の肢冷脈微、
脾胃虚寒の食少不運・脘腹冷痛・吐瀉冷痢、
肺寒痰飲の喘咳、風寒湿痺の肢節冷痛などに適し、
乾姜は主に脾胃に入り温中寒散する。
・桂枝
基原:
クスノキ科のケイの若枝または樹皮。
桂枝は辛甘・温で、
主として肺・心・膀胱経に入り、
兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、
辛散温通して気血を振奮し営衛を透達し、
外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、
散寒止痛・活血通経に働くので、
風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の腹痛・
血寒経閉などに対する常用薬である。
発汗力は緩和であるから、
風寒表証では、有汗・無汗問わず応用でき、
とくに体虚感冒・上肢肩臂疼痛・
体虚新感の風寒痺痛などにもっとも適している。
このほか、水湿は陰邪で陽気を得てはじめて化し、
通陽化気の桂枝は
化湿利水を強めるので、
利水化湿薬に配合して痰飲・畜水などに用いる。
・人参
基原:
ウコギ科のオタネニンジンの根。
加工調整法の違いにより
種々の異なった生薬名を有する。
人参は甘・微苦・微温で
中和の性を稟け、脾肺の気を補い、
生化の源である
脾気と
一身の気を主る肺気の充盈することにより、
一身の気を旺盛にし、
大補元気の効能をもつ。
元気が充盈すると、益血生津し
安神し智恵を増すので、
生津止渇・安神益智にも働く。
それゆえ、虚労内傷に対する第一の要薬であり、
気血津液の不足すべてに使用でき、脾気虚の倦怠無力・食少吐瀉、
肺気不足の気短喘促・脈虚自汗、心神不安の失眠多夢・驚悸健忘、
津液虧耗の口乾消渇などに有効である。
また、すべての大病・久病・大吐瀉による
元気虚衰の虚極欲脱・脈微欲絶に対し、もっとも主要な薬物である。
・半夏
基原:
サトイモ科のカラスビシャクの
塊茎の外皮を除去して乾燥したもの。
半夏は辛散温燥し、水湿を行らせ逆気を下し、
水湿を除けば脾が健運して痰涎は消滅し、
逆気が下降すると
胃気が和して痞満嘔吐は止むので
燥湿化痰・和胃消痞・降逆止嘔の良薬である。
それゆえ、脾虚生痰の多痰、痰濁上擾の心悸・失眠・眩暈、
痰湿犯胃の悪心嘔吐・飲食呆滞・心下痞結にもっとも適する。
また、適当な配合を行えば、
痰湿犯胃の咳喘・胃虚や胃熱の嘔吐・
痰湿入絡の痰核などにも使用できる。
このほか、行湿通腸するので老人虚秘にも効果がある。
生半夏を外用すると癰疽腫毒を消す。
・大棗
基原:
クロウメモドキ科のナツメ。またはその品種の果実。
大棗は甘温で柔であり、
補脾和胃と養営安神に働くので、
脾胃虚弱の食少便溏や
営血不足の臓燥など心神不寧に使用する。
また薬性緩和にも働き、
峻烈薬と同用して薬力を緩和にし、脾胃損傷を防止する。
脾胃を補うとともに
芍薬と協同して筋肉の緊張を緩和していく。
また、生薑との配合が多く、
生薑は大棗によって刺激性が緩和され、
大棗は生薑によって気壅致脹の弊害がなくなり、
食欲を増加し消化を助け、
大棗が営血を益して発汗による
傷労を防止し、営衛を調和することができる。
提要:
傷寒時に上焦には熱邪が、下焦には寒邪が生じた場合の証治について。
訳:
傷寒の病に罹って胸中に熱邪があり、
胃腸中には寒邪があると、腹部の疼痛と嘔吐したがるという症状が出現し、
この場合は黄連湯で治療する。
黄連三両 甘草三両、炙る 乾薑三両
桂枝三両、皮を除く 人参二両 半夏半升、洗う 大棗十二個、裂く
右の七味を、一斗の水で、六升になるまで煮て、滓を除き、温服し、昼に三回夜に二回服用する。
恐らく仲景の処方ではないだろう。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
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為沢