午前5:30の空模様。
午前5:30の空模様。

最近、電車通勤になりましたので
朝が随分と早くなりました。
やはり朝の空気は気持ちがいいですね!

では『難経』の記事に参ります。


【原文】
五十八難曰、傷寒有幾。其脈有変不。

然。
傷寒有五、有中風、有傷寒、有湿温、有熱病、
有温病、其所苦各不同。
中風之脈、陽浮而滑、陰濡而弱。
湿温之脈、陽浮而弱、陰小而急。
傷寒之脈、陰陽倶盛而緊濇。
熱病之脈、陰陽倶浮、浮之而滑、沈之散濇。
温病之脈、行在諸経、不知何経之動也、各随其経所在而取之。

傷寒有汗出而愈、下之而死者、
有汗出而死、下之而愈者、何也。

然。
陽虚陰盛、汗出而癒、下之即死。
陽盛陰虚、汗出而死、下之而癒。

寒熱之病、候之如何也。

然。
皮寒熱者、皮不可近席、毛髪焦、鼻槀、不得汗。
肌寒熱者、皮膚痛、唇舌槀、無汗。
骨寒熱者、病無所安、汗注不休、歯本槀痛。


【現代語訳】
傷寒には幾つか種類があるが、
その脈状には変化があるのだろうか。

答え。
傷寒には中風、傷寒、湿温、熱病、温病の五つがあり、
それぞれによって症状は異なってくる。
中風の脈象は、寸口は浮で滑、尺位は濡で弱。
湿温の脈象は、寸口は浮で弱、尺位は小で急。
傷寒の脈象は、寸口・尺位共に強く緊で濇。
熱病の脈象は、寸口・尺位共に浮で、
指を浮かせて取ると滑、沈めて取ると散で濇。
温病の脈象は、正常とは異なる気が各経に流れているので、
どの経が動いているのかはわかり辛い。
このような時は、先ずどの病がどの経に属しているのかを
明らかにし、脈象を取る。

傷寒の場合、
治療で発汗させることで癒え、下すことで亡くなるものがあり、
反対に発汗させることで亡くなり、下すことで癒えるものもある。
どうしてなのか。

答え。
陽虚陰盛であれば発汗することで治癒するが、
これを下すと亡くなることがある。
反対に、陰虚陽盛であれば発汗することで亡くなることもあるが、
下すことで治癒する。

寒熱の病における症状はどのようなものか。

答え。
寒熱が肌表にある場合は、敷物の上に坐ることも 寝ることも出来ず、
髪の毛は熱で枯れて潤いを失い、鼻は乾き、汗は出ない。
寒熱が肌肉にある場合は、皮膚は痛み、唇や舌は渇き、汗が出ない。
寒熱が骨にある場合は、安らぐことも出来ず、汗は流れ出て止まらず、
歯の根は乾いて痛む。


【解説】
当難では“広義”の傷寒について論じている。

そもそも広義の「傷寒」とは、
『黄帝内経素問』熱論篇
「今夫熱病者、皆傷寒之類也。」「今、夫れ熱病なる者は、皆傷寒の類なり。」)と
書かれているように、外感熱病の総称である。
一方、狭義の「傷寒」とは、
風寒の邪を感受したことにより発症する外感病症を指しており、
後に張仲景が『傷寒論』という書物を記し 後世に伝わっていく。
(『傷寒論』に関しては、為沢先生が記事を書かれています。
為沢先生の傷寒論の記事はこちらをクリックして下さい。

難経では前者を意味し、
傷寒の脈象・治療法・病位を記している。
①脈象(中風、傷寒、湿温、熱病、温病の5つに分類。)
中風:風邪が肌腠を傷つけた状態であり、
後世の『傷寒論』中の太陽桂枝湯証にあたる。
脈は寸口が浮滑で尺位が弱である。

湿温:湿邪と暑邪が合して起こる病であり、
湿は陰邪なので陽気を抑止するが、病がまだ表に属すため寸口は浮弱。
暑邪は陽邪なので、それが滞り内で蒸すると尺位は小急となる。

傷寒:寒邪が肌膚を襲ったもので、
頭項部の強ばり、関節痛、悪寒、無汗の症状が現れ、
脈は寸・尺共に緊濇となる。
『傷寒論』中の麻黄湯証に相当。

熱病:温熱の邪を感受して起こる病であり、
寸口、尺位共に浮で指を浮かせて取ると滑、
按じると散濇となる。

温病:四季それぞれの季節において、温熱の邪を感受して引き起こされる外感熱病。
病の動きが速く、どこに起きているかを見極めることが難しいとされている。

②治療法
ここでの治療方法は、
病が表にあれば発汗法を用いり、
裏にあれば下法が適切だと記載している。

③病位
ここでは皮膚・肌肉・骨と病位を三段階に分けており、
これは病の軽・重・深・浅を表している。
これを丁錦が『傷寒論』を引用し、それぞれ下記の様に注釈している。
皮膚:人体の最も表層であり、浅い位置である。
『傷寒論』の
「邪が太陽の表にある場合、風には桂枝湯を用い、
寒には麻黄湯を用いて、発汗させれば癒える」としているものである。

肌肉:肌肉は陽明経が主っており、
『傷寒論』の
「邪が半表半裏にある場合、小柴胡湯を用いて
和解させれば癒える」としているものである。

骨:邪が深い、裏にある状態であり、
『傷寒論』の
「正陽・陽明の裏証と称しているもので、
承気湯を用いてこれを下せば癒える」としているものである。


<参考文献>
『難経鉄鑑』 たにぐち書店
『難経解説』 東洋学術出版社
『中国傷寒論解説』 東洋学術出版社
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『基礎中医学』 燎原書店

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

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