こんにちは、為沢です。
まだまだ寒い日が続きますが、
高知県ではサクラの開花が確認されたようで、
日本気象協会は、
大阪の開花は4月1日に予想しております。
ところでサクラの開花前線の速度って
どのくらいか御存知でしょうか?
その移動速度は、約2〜4km/h。
ちょうど、人間の歩く速さと同じだそうで
約1ヶ月かけて日本列島を縦断します。
これを知った時は、
春がゆっくり歩いて来ているみたいで
何かいいな と思ったことを覚えております。
個人的に春は好きなので
サクラが満開になる頃が待ち遠しいです。
では、今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)六十六章と六十七章。
六十六章では、発汗法を行ったあと、
腹部が脹って膨満感がある場合の証治について。
六十七章では、 誤治により中焦を傷つけ、
邪が上衝した場合の証治について述べております。
弁太陽病脈証并治(中)六十六章
發汗後、腹脹満者、
厚朴生薑半夏甘草人参湯主之。方二十九。
厚朴半斤、去皮 生薑半斤、切半夏半斤、洗 甘草二両、炙人参一両
右五味、以水一斗、煮取三升、去滓、溫服一升、日三服。
和訓:
発汗して後、腹脹満するものは、
厚朴生薑半夏甘草人参湯之を主る。方二十九。
厚朴半斤、炙る、皮を去る 生薑半斤、切る 半夏半斤、洗う 甘草二両、炙る 人参一両
右五味、水一斗を以て、煮て三升を取り、
滓を去り、一升を温服し、日に三服す。
・發汗後、腹脹満者
汗は中焦で化した水穀の気を受けてできるものである。
従って発汗させた後では中焦は虚となり、
運化・昇降の働きは失調してしまう。
特に湿気の滞りは脾に現れるので、
腹部が腸り、膨満感をみるのである。
厚朴生薑半夏甘草人参湯
方義
・厚朴
基原:
モクレン科のカラホウ、およびその変種の樹皮。
前者を川朴、湖北厚朴、
後者を温州厚朴として区別することがある。
日本産(和厚朴)はホウノキの樹皮で、日局品である。
厚朴は苦辛・温で、
苦で下気し辛で散結し温で燥湿し、
下気除満・燥湿化痰の効能を持ち、
有形の実満を下すとともに無形の湿満を散じる。
それゆえ、食積停留・気滞不通の胸腹脹満・大便秘結、
湿滞傷中の胸腹満悶・嘔吐瀉痢に適する。
また、燥湿化痰・下気降逆にも働き、
痰湿壅肺・肺気不降による喘咳にも有効である。
・生薑
基原:
ショウガ科のショウガの新鮮な根茎。
日本では、乾燥していない生のものを鮮姜、
乾燥したものを生姜を
乾生姜ということもあるので注意が必要である。
生薑は辛・微温で肺に入り発散風寒・祛痰止咳に、
脾胃に入り温中祛湿・化飲寛中に働くので
風温感冒の頭痛鼻塞・痰多咳嗽および水湿痞満に用いる。
また、逆気を散じ嘔吐を止めるため、
「姜は嘔家の聖薬たり」といわれ
風寒感冒・水湿停中を問わず
胃寒気逆による悪心嘔吐に非常に有効である。
・半夏
基原:
サトイモ科のカラスビシャクの
塊茎の外皮を除去して乾燥したもの。
半夏は辛散温燥し、水湿を行らせ逆気を下し、
水湿を除けば脾が健運して痰涎は消滅し、
逆気が下降すると胃気が和して
痞満嘔吐は止むので
燥湿化痰・和胃消痞・降逆止嘔の良薬である。
それゆえ、脾虚生痰の多痰、
痰濁上擾の心悸・失眠・眩暈、
痰湿犯胃の悪心嘔吐・飲食呆滞・
心下痞結にもっとも適する。
また、適当な配合を行えば、
痰湿犯胃の咳喘・胃虚や胃熱の嘔吐・
痰湿入絡の痰核などにも使用できる。
このほか、行湿通腸するので老人虚秘にも効果がある。
生半夏を外用すると癰疽腫毒を消す。
・甘草
基原:マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
・厚朴生薑半夏甘草人参湯について
主薬の厚朴で気を下に巡らせて腹満を取り、
生薑で脾を温め陽気をめぐらせて痰飲を散じ、
半夏で胃を開き脾の湿を燥かす。
上記の三薬で、停滞した痰と気の流通を改善する。
提要:
発汗法を行ったあと、
腹部が脹って膨満感がある場合の証治について
訳:
発汗させた後、腹が膨満してくれば、
厚朴生薑半夏甘草人参湯で治療せねばならない。処方を記載。第二十九法。
厚朴半斤、炙る 生薑半斤、炙る 半夏半升、洗う 甘草二両、炙る 人参一両
右の五味を、一斗の水で、三升になるまで煮て、滓を除き、一升を温服し、日に三回服用する。
六十七章
傷寒若吐、若下後、心下逆満、
気上衝胸、起則頭眩、
脉沈緊、發汗則動経、身爲振振揺者、
茯苓桂枝白朮甘草湯主之。方三十。
茯苓四両 桂枝三両、去皮 白朮 甘草各二両、炙
右四味、以水六升、煮取三升、煮取三升、去滓、分温三服。
和訓:
傷寒若しくは吐し、若しくは下して後、
心下逆満し、気上りて胸を衝き、
起てば則ち頭眩し、脉沈緊に、
發汗すれば則ち経を動かし、身振振と揺を為すものは、
茯苓桂枝白朮甘草湯之を主る。方三十。
茯苓四両 桂枝三両、皮を去る 白朮 甘草各二両、炙る
右四味、水六升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。
傷寒では発汗法を行うべきなのに、
吐法、或いは下法を行うことは誤治にあたる。
・
・心下逆満、気上衝胸、起則頭眩、
脉沈緊、發汗則動経、身爲振振揺者
誤治により脾胃の陽気をひどく傷つけてしまい、
飲邪が虚に乗じて胃に入り、
表邪が内に陥ち込むので、心窩部に膨満感が生じる。
中焦が虚せば、それぞれの働きを統轄することができず、
脾胃は肝木に克されますます弱くなる。
そして本来下方に下がるべき濁・陰の気は上衝し、
清・陽の気は抑えられ、胸に気が上衝し、
起きて立ち上がろうとすると眩暈がする。
「脈沈緊」は、下焦の寒水も誤治によって影響を受けたことを示している。
仮に再度誤って発汗法を行い、
表の陽気を虚させれば、木気の横犯が起こるので
身体がぐらぐら揺れるのである。
方義
・茯苓
基原:
サルノコシカケ科のマツホドの外層を除いた菌核。
茯苓は甘淡・平で、甘で補い淡で滲湿し、
補脾益心するとともに利水滲湿に働き、
脾虚湿困による痰飲水湿・食少泄瀉および
水湿内停の小便不利・水腫脹満に必須の品であり、
心脾に入って生化の機を助け寧心安神の効能をもつので、
心神失養の驚悸失眠・健忘にも有効である。
茯苓の特徴は「性質平和、補して峻ならず、利して猛ならず、
よく輔正し、また祛邪す。脾 虚湿盛、必ず欠くべからず」といわれるが、
性質が緩やかであるところから補助薬として用いることが多い。
・桂枝
基原:
クスノキ科のケイの若枝または樹皮。
桂枝は辛甘・温で、主として肺・心・膀胱経に入り、
兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、
辛散温通して気血を振奮し営衛を透達し、
外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、
散寒止痛・活血通経に働くので、
風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の腹痛・
血寒経閉などに対する常用薬である。
発汗力は緩和であるから、
風寒表証では、有汗・無汗問わず応用でき、
とくに体虚感冒・上肢肩臂疼痛・
体虚新感の風寒痺痛などにもっとも適している。
このほか、水湿は陰邪で陽気を得てはじめて化し、
通陽化気の桂枝は化湿利水を強めるので、
利水化湿薬に配合して痰飲・畜水などに用いる。
・白朮
基原:
キク科のオオバナオケラの根茎。
この他、日本薬局方ではオケラの周皮を除いた根茎を規定しており、
日本では一般にこれが流通している。
白朮は甘温で補中し苦で燥湿し、
補脾益気・燥湿利水の効能を持ち、健脾の要薬である。
脾気を健運し水湿を除いて痰飲・水腫・泄瀉を消除し、
益気健脾により止汗・安胎にも働く。
それゆえ、脾虚不運の停痰停湿・泄瀉腫満に対する主薬であり、
表虚自汗および脘腹脹満・胎動不安にも用いる。
・
・甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
・茯苓桂枝白朮甘草湯について
水飲を温化して除くと同時に、
健脾利湿により本治して水飲の産生を防止する。
主薬は健脾利水の茯苓で、
温陽化気の桂枝の補助のもとに、
水飲を温化して利小便によって除去する。
炙甘草は、益気和中と諸薬の調和に働く。
全体で温化水飲・健脾化湿の効能が得られ、
温であって熱でなく、利して峻でなく、
水飲停聚の偏寒のものに対して温化水飲の良効を示す。
提要:
誤治により中焦を傷つけ、邪が上衝した場合の証治について
訳:
傷寒の患者に吐法、或いは攻下法を施したあと、
患者は心下の部位が膨満し、
あたかも気が胸に突き上げて来るように感じ、
起立すれば眩暈を覚え、脈象は沈緊となった。
この状態のものに今度は発汗法を施すと、
さらに経脈まで損傷し、
ついには身体がぶるぶる震えて不安定になる。
これは茯苓桂枝白朮甘草湯で治療する。
処方を記載。第三十法。
茯苓四両 桂枝三両、皮を除く 白朮 甘草各二両、炙る
右の四味を、六升の水で、三升になるまで煮て、滓を除き、三回に分けて温服する。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
為沢
春がゆっくり歩いてきている・・・ってイイ表現ですね。和みました。
冷え性なので今時期のこの気温はかなりツライものがあります。
でも、この気温ならもしかすると子供の入学式(6日)に桜が見られるかもとちょっぴり期待しています。
ウン十年前の話なのですが、勤めていた会社の近所で火事があり家が一軒全焼しました。
その年の春、いつもは他の桜が終わりだした頃にやっと咲き始めるその家の前にあった桜がかなり早く咲き、皆「火事でぬくもった(地元の方言です。大阪の人に通じるか?)んじゃ~」と言っていました。
日本人は桜が好きですよね。
もちろん私もです。
おコメさんへ
今週に入り大分暖かくなってきました。
お子さまの入学式の日は桜が満開になってくれれば嬉しいですね。
火事のお話拝見致しました。
「火事でぬくもった」が地方の方言とのことですが
そのまま「温もった」のことですか?
方言というくらいだから違うんでしょうか。
…んん。
桜の話よりそっちが気になり、
トンチみたいに思えてきました(笑)
宜しければ答えを教えて下さい。
コメントありがとうございます!
はい、その通り「温もった」です。
共通語でしたか??
こっちに来て聞いたことがなかったので、でも西日本の人だとなんとなくわかるかもしれないと()で補足してみたのですが・・・
少なくとも関東の人にはわからないのでは・・・もしかして標準語ですか~?
こちらに来て小学校の授業参観で先生がバリバリの関西弁で授業するのを聞いて大阪を実感しました。
いまだにオバチャンや男の人が使うのはなんともないのに若くてきれいな女の子が大きい声でガンガンしゃべっているのを聞くと一瞬「えっ」と思います。なぜなんでしょうね。
特に面白いと思ったのは「シュッとした」です。
最初意味がわかりませんで、スリムな人のことだと思っていました。
おコメさんへ
「温もる」について調べたところ、
「現在は、どちらかと言えば文章語となり、
口語として西日本で頻繁に用いられるが方言ではない。」
(ウィクショナリー日本語版より引用)
と出てきました。
僕の場合、臨床の現場でも体が温まってきた時に
「ぬくもってきましたね」とかよく言います。
東日本ではあまり言わないのでしょうか?
おコメさんの仰られる「大きな声でガンガン喋っている女の子」は
関西弁に限らず、どこの子でも戸惑うと思いますよ(笑)
あと「シュッとした」ですね。
これは意識せず使ってました。
他から見れば大阪は擬音での表現が多いようですね。
「どうしたん。シュッとしたカッコして」なんて使い方します。
おそらく、スリムなだけでなくビシッとキメている時に使いますかね。
「ビシッ」も擬音ですが御愛嬌(笑)
コメントありがとうございます!