<近日開催予定のイベント情報>
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こんにちは、大原です。
前回の続きです。(前回:鍼灸甲乙経を読む その8
前回まで、五臓の「心」、「肺」、「肝」についてをみてきました。
今回は「脾」からです。
(前回と同様に、『霊枢』本蔵篇(第47)と違う文字を
太文字としてます。)

脾小則安、難傷于邪。
脾大則湊䏚。而痛、不能疾行。
脾高則䏚引季脇而痛。
脾下則下加大腸、下加大腸則蔵外、易受邪。
脾堅則蔵安難傷。
脾脆則善病消癉易傷。
脾端正則和利難傷。
脾偏傾則瘈●善脹。(●:やまいだれ に「從」)

<読み>
脾、小なれば則ち安く、邪に傷れがたし。
脾、大なれば則ちよくしょうあつまりて痛み、疾行することあたわず。
脾、高きときは則ち、䏚、季脇に引きて痛む。
脾、ひくきときは則ちしも大腸に加わる。
しも、大腸に加わるときは則ち外に蔵し、邪を受けやすし。

脾、堅ければ則ち蔵安く傷れ難し。
脾、脆なるときは則ちよく消癉しょうたん病み傷れ易し。
脾、端正なるときは則ち和利し傷れ難し。
脾、偏傾なるときは則ち瘈●し、よく脹するなり。(●:やまいだれ に「從」)

<意味>
脾が小さければ安定して、邪に傷つけられにくいのです。
脾が大きければわき腹に邪が滞って痛み、早く歩けません。
脾が高位であれば季脇部が脇腹に引っぱられるように痛みます。
脾が低いときは下の大腸を上に乗りかかってきます。
大腸に乗りかかってくると、外部に近くなって、邪を受けやすくなります。
脾が堅ければ蔵は安定し、邪に傷れにくいです。
脾が脆弱なときは、よく消癉の病を発生して傷れやすくなります。
脾が端正なときには、脾気も平和順利であって傷れ難く、
もし脾の位置が偏傾し不正なるときは、
瘈●や、
よく脹病を発生するものであります。
(●:やまいだれ に「從」)

<用語>
・䏚(しょう、びょう):両脇腹の柔かいところ
疾行しっこうする:早く走る、早く移動する
消癉しょうたん:消渇(しょうかち)、現代の糖尿病

腎小則安、難傷。
腎大則善病腰痛、不可以俛仰、易傷以邪。
腎高則善病背膂痛、不可以俯仰。
腎下則腰尻痛、不可俛仰、爲狐疝。
腎堅則不病腰痛。
腎脆則苦病消癉易傷。
腎端正則和利難傷。
腎偏傾則苦腰尻痛。
凡此二十五變者、人之所以常病也。

<読み>
腎、小なるものは則ち安く、傷れ難し。
腎、大なるものは則ちよく腰痛を病み、もって俛仰すべからず、邪に傷れやすし。
腎、高きものは則ちよく背膂痛を病み、もって俛仰すべからず。
腎、下きは則ち腰尻痛み、俛仰すべからず、狐疝となる。
腎、堅きものは則ち腰痛を病まず。
腎、脆なるものは則ち消癉を病むを苦しみ、傷れやすし。
腎、端正なるものは則ち和利して傷れ難し。
腎、偏傾なるものは則ち腰尻の痛みに苦しむなり。

およそこの二十五變なる者、もってよく人の常病となる所なり。

<意味>
腎が小さければ安定して、邪に傷つけられにくいのです。
腎が大きなものはよく腰痛を病み、そのために前にかがんだり後ろにあお向くことができません。
そして邪に傷れやすいです。
腎の位置が高いものは背膂(背中、背骨)の疼痛のために、
前かがみになって後ろに仰ぐことができません。

腎の位置が低いものは腰が尻が痛んでうつむいたり上を向くことができず、
また、狐疝の病になり安いのです。

腎が堅実なものは腰痛を病みにくいです。
腎が脆弱なものは、よく消癉しょうたんの病を発生して苦しみ、傷れやすいものであります。
腎が端正なものは、腎気も平和順利で邪に傷れることもなく、
腎の位置が偏傾し不正なものは、腰背の痛みに苦しむものであります。

以上、これまで申し上げました五臓の
大小、高低、堅脆、端正、および偏傾不正等、
あわせて二十五変の現象というものは、人体によく起こりえる病なのであります。

さて、腎のところで、
『霊枢』と、今回の『甲乙経』とを分かりやすく比較すると

『霊枢』 → 腎堅則不病腰背痛。
『甲乙経』→ 腎堅則不病腰痛。

と、腎が堅実である場合には、
「腰と背中が痛まない」から
「腰が痛まない」
微妙に修正されており、興味深いです。

続きます。


参考文献
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍

興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

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