こんにちは、大原です。
今回は、鍼灸甲乙経の「第4 五臓と五官」です。
前回と同様、出典元である黄帝内経の篇を、
段落ごとに記しております。
(前回の記事:鍼灸甲乙経を読む その4)
第4 五臓と五官
鼻者、肺之官。
目者、肝之官。
口脣者、脾之官。
舌者、心之官。
耳者、腎之官。
凡五官者、以候五蔵。
肺病者、喘息鼻張。
肝病者、目眥青。
脾病者、脣黄。
心病者、舌巻顴赤。
腎病者、顴與顏黒。
(『霊枢』五閲五使篇 第37より)
→鼻、目、唇、舌、耳の五官によって、
五臓の状況を窺い知ることができる。
肺の病では、鼻翼が外に張って喘息となる。
肝の病では、目尻が青くなる。
脾の病では、唇が黄色くなる。
心の病では、舌が巻き頬が赤くなる。
腎の病では、頬と顔が黒くなる。
故肺氣通于鼻、鼻和則能知香臭矣。
心氣通于舌、心和則舌能知五味矣。
(『霊枢』脉度篇 第17より)
→そのため、肺気は鼻に通じ、
鼻の調和が取れていれば香や匂いがよく分かる。
心気は舌に通じ、舌の調和が取れていれば五味がよく分かる。
『素問』曰、
「心在竅為耳(一云舌)。
夫心者火也、腎者水也、水火既済。
心氣通於舌、舌非竅也、其通於竅者、寄在於耳。」
→ここで『素問』曰、とあるのは、
『素問』の陰陽応象大論篇(第5)から、
南方赤色、入通於心、開竅於耳、藏精於心。
(南の方角は、五行の関係からすると
赤色と関係深く、五臓では心、
耳に開竅し、心に精を蔵するのである。)
の部分を言っていると思われる。
肝氣通於目、目和則能視五色矣。
(『霊枢』脉度篇 第17より、上と同様)
『素問』曰「諸脉者、皆属於目。」
又『九巻』曰「心蔵脉、脉舎神。神明通体、故云属目。」
→ここで『素問』曰とあるのは、
『素問』の 五蔵生成篇(第10)から、
また、『九巻』とあるのは、
『霊枢』の 本神篇(第8)からの
抜粋であることを示している。
→肝気が目に通じて目の調和が取れていればよく見える。
脾氣通於口、口和則能知五穀味矣。
腎氣通於耳、耳和則能聞五音矣。
(『霊枢』脉度篇 第17より、上と同様)
→脾気が口に通じて口の調和が取れていれば味がしっかりとして、
腎気が耳に通じて耳の調和が取れていればよく音を聞くことができる。
『素問』曰「腎在竅為耳。然則腎氣上通於耳、下通於陰也。」
→ここで『素問』曰とあるのは、
『素問』の陰陽応象大論篇(第5)の「腎・・・、在竅為耳」の部分であり、
そのあとは、また『霊枢』脉度篇 第17から「腎氣通于耳」の部分であると思われる。
→腎は耳に開竅する。だから腎気は上部で耳に、下部では大小便に通じている。
後半に続きます。
参考文献
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍
興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。