こんにちは、新川です。

気がつけば7月、
天神祭を下旬に控え、
梅雨から夏への転換期。

天神祭
天神祭

出典:全国花火大会(花火カレンダー2011)より

学生時代は京橋に住んでおり、
毎回、試験の前には、
大阪天満宮へ行っておりました。
今思えば、
「そんな時間があるなら勉強しろよ!!」
とつっこみたくなります(笑)

さて、今回は
黄帝内経素問
異法方宜論篇(其ノ十二)
についてです。


今回は、異法方宜論篇について綴って参ります。
本来ならここにまとめてある以上の内容がありますが、
なるべく分かりやすくするため、
一部を抜粋して表現させて頂いております


【異法方宜論篇 第十二】

黄帝が問う。
「医師が疾病を治療するとき、
同じ病気に対して各種の異なる治療の方法があり、
そのいずれの場合でも結果的には治療しうるということは、
どのような道理によるものであろうか。」

岐伯が答える。
それは、地理、形勢の相違によって、
治療方法にも各おのにふさわしいものがあるからです。

「たとえば、
東方の地域は天地始生の気を得て、
気候は温和で、魚と塩とを産出する地方であり、
海浜にあって水に接近しています。
東方の地域の人たちは、魚類をよく食べ、
鹹味を好み、この地方に安住して
魚塩を美食としています。
しかし、魚類を多く食べますので、魚の性が火に属することにより、
人は中に熱を累積するようになります。
また塩を多く食べますので、
鹹が血に走ることにより血液が消耗損傷するようになります。
そこで東方の地域の人たちは、
いずれも皮膚の色は黒く、肌のきめは粗いのです。
この地域では癰瘍の類の外科的疾病が多発します。
これらの病気に対する治療法としては、
砥石刺法を用いるべきです。
それゆえ、砥石の治療方法は、東方より伝来したものです。」

「西方の地域は、山が多く荒野・砂漠が広がり、たくさんの金属・宝石を産出し、
また砂や岩も多くあります。
この地域の自然環境は、秋季の気候状況によく似ており、
自然界には一種の物を引きしめる現象があります。
西方の地域の人たちは、山陵に住み、
住居は簡単で風に吹きさらされ、その水土も剛強な性質をもっています。
彼らの生活では、衣服について深く考えるようなことはせず、
毛布を身につけて、草でつくった寝床で眠ります。
しかし、食生活は〔ぜいたくで〕新鮮でおいしい乳製品や肉類をとるために、
身体は肥えており、外邪によって容易に侵されるようなことはありません。
彼らの発病の多くは内傷に属し、これらの病気に対する治療法としてはすべて薬物を用いるべきです。
それゆえ薬物療法は、西方より伝来したものです。」

「北方地域の自然界の気候は冬季の状況によく似ており、
閉し蔵める気象を有し、地形は比較的高く、
人々は山陵に住み、普段は風が冷たく氷の張る環境の中にいます。
北方地域の人たちは、遊牧生活を好み、四方の原野を仮住まいとし、
食べものはみな牛・羊乳製品です。
そこで、内臓が寒を受け、張満の疾病を生じやすくなります。
これらの病気に対する治療法としては、艾を用いて焼灼すべきです。
ですから艾灸による焼灼療法は、北方より伝来したものです。」

「南方の地域は、自然界の万物を生長させ養う気候に富み、
陽気が最も旺盛な所です。地形は低く、水土が薄く弱いので、霧や露が常に発生します。
この地域の人たちは、酸味と発酵させたり煮たりした食品をよくとり、
身体の皮膚はきめが細かくて赤味を帯びています。
ここでは筋脈の拘急、しびれて感覚がなくなるほどの疾病が多発します。
これらの病気に対する治療法としては、微鍼を用いるべきです。
九鍼による治療法を、南方より伝来したものです。」

「中央の地域は、その地形は平坦であって、湿気が多く、産物は豊富であり、
人々の食物の種類はとても多く、生活も比較的安定しています。
この地域では、痿弱・厥逆・寒熱などの疾病が多発します。
これらの病気に対する治療法としては、導引・按蹻の治療方法はまた中央から拡まっていったものです。」

「以上のことから考えると、聡明な医師というものは、これらの多くの治療方法を総括して、
具体的な状況にもとづいて、臨機応変に対処できる人です。
そこで、治療方法には各種それぞれ相違がありますが、結果的にはすべて治癒できるのです。
これは医師が病状をしっかりと理解でき、さらに治療の大原則を把握しているからに他なりません。」

☆この篇では、
因地制宜
(→疾病治療のときに、異なる地域の環境特徴を考慮して
適宜治療の原則を決定することをいう。)
の重要性を説いている。

ちなみに大阪の気候の特徴(瀬戸内気候 )といえば、

●温暖多湿で夏が非常に暑く、雨が比較的少ない
●晴天日数が非常に多い
●降雨は台風と梅雨に集中
●冬は比較的暖かい

であり、梅雨は湿邪、
秋冬は燥邪が強い。


以下、原文を掲載し、上記色文字の部分に対応している部分を、
緑字で色付けしております。

黄帝問曰、医之治病也、一病而治各不同、皆愈、何也。
岐伯対曰、地勢使然也
故東方之域、天地之所始生也。魚塩之地、海浜傍水。其民食魚而嗜鹹。
皆安其処、美其食。魚者使人熱中、塩者勝血。故其民皆黒色疏理。其病皆為癰瘍。其治宜砭石。故砭石者、亦従東方来。
西方者、金玉之域、沙石之処、天地之所収引也。其民陵居而多風、水土剛強。其民不衣而褐荐、其民華食而脂肥。故邪不能傷其形体。
其病生於内。其治宜毒薬。故毒薬者、亦従西方来。
北方者、天地所閉蔵之域也。其地高、陵居、風寒冰冽。其民楽野処而乳食。蔵寒生満病。
其治宜灸焫。故灸焫者、亦従北方来。
南方者、天地所長養、陽之所盛処也。其地下、水土弱、霧露之所聚也。其民嗜酸而食胕。故其民皆致理而赤色。其病攣痺。
其治宜微鍼。故九鍼者、亦従南方来。
中央者、其地平以湿、天地所以生万物也衆。其民食雑而不労。故其病多痿厥寒熱。其治宜導引按蹻。故導引按蹻者、亦従中央出也。
故聖人雑合以治、各得其所宜。故治所以異而病皆愈者、得病之情、知治之大体也。


参考文献:
『黄帝内経素問 上巻—現代語訳』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版
『臓腑経絡学』 アルテミシア
『内経気象学入門』 緑書房

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