こんにちは、大原です。
前回に続いて、黄帝内経によく使われている
助詞をみていきます。
今回は
「すなわち」と読む助詞4つ(下記①〜④)と、
「已(すでに)」についてです。
・すなわち
①「則」・・・〜すれば、すなわち〜(「〜であれば〜である」:条件)
この「則」は、以前の記事(漢文の助詞 その1)で出てきました。
「則」はよく出てきますので、
もう一度、他の例文で復習してみましょう。
例1:不動則熱、不堅則陷且空、不与衆同。
〜霊枢 経脈篇(第十)より〜
(動かざればすなわち熱し、堅くならざればすなわち陥かつ空となり、衆と同じからず。)
経脈篇で、例1の文章のひとつ前に、
”人体の邪気が留まると脈が突然動ずる”
という内容が記されています。
すなわち、例1の文章の主語は
文章の流れから「邪気」とするのが自然でしょう。
すると、不動則熱の意味は
「(邪気が)動かなければ熱となり」となります。
次の不堅則陷且空については、
主語が同じ「邪気」では意味がつながらないことから
「(脈が)堅くなければ」となり、さらに
「(邪気が)落ち込み(経脈を)空虚にして」と
主語・目的語が途中で入れ替わるような解釈が
なされているようです。
最後の不与衆同。では、「与」という助詞が出てきます。
これは「〜と」という意味のようです。
例えば「A与B」という文ですと、
「AとBと」という意味になります。
この場合、意味としては
「衆(一般の人)と(脈が)同じではない」となります。
・「已」・・・すでに(「すでに」)
②「乃」・・・すなわち(「そこで、やっと、ようやく」)
例2:故衛気已平、営気乃満、而経脉大盛。
〜霊枢 経脈篇(第十)より〜
(ゆえに衛気すでに平なれば(さかんなれば)、
営気すなわち満ちて、経脈大いに盛んなり。)
「已」は、「すでに」と訳され、
動作などが終わった状態をいいます。
「已」の反対の意味の助詞は「未」で、
「未」はまだ動作などがなされていない状態をいいます。
そして、「乃」は「そこで、ようやく」という意味で
これらの意味に注意しながら訳していくと
「ゆえに衛気が満ちてから、
営気がようやく満ちて、経脈を大いに盛んにさせることになる」
となります。
これらの助詞の意味で気をつけないといけない点は、
時間の経過の前後でしょう。ここでは、
「衛気が満ちる」→「営気が満ちる」→「経脈が盛んになる」
という満ちていくところの順番をイメージできれば、
訳の解釈として
大きく外れることは無いといえると思います。
さて、異なる「すなわち」の助詞について
見てきましたが、他にもあります。
③「即」・・・すなわち(「すぐに」)
④「便」・・・すなわち(「たやすく」)
③、④の「すなわち」は、漢字の意味から考えると
わかりやすいですね。
以上、4つの「すなわち」について述べてみました。
同じ読み方ですが、意味が異なることに
注意しないといけません。
続きます。
※正確な現代語訳や読み下し文、
その他漢文の解説に関する内容は、
参考文献を参照してください。
参考文献:
『黄帝内経 素問 上巻』 東洋学術出版社
『黄帝内経 霊枢 上巻』 東洋学術出版社
『基礎からわかる漢文』 日栄社
『漢文法基礎 本当にわかる漢文入門 』 講談社学術文庫
*画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
ぜひ参考文献を読んでみて下さい。
大原