張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。
今回の傷寒論は
弁少陰病脈証并治 二百八十九章・二百九十章・二百九十一章。
二百八十九章では少陰病で
心陽が虚していない者は必ず治ることを述べており
二百九十章では少陰中風証の欲愈する場合の脈証について。
二百九十一章では少陰病が治る時間帯について。
それぞれ詳しく述べております。
二百八十九章
少陰病、惡寒而踡、時自煩、欲去衣被者、可治。
和訓:
少陰病、悪寒して踡り、時に自ら煩し、
衣被を去らんと欲するものは、治すべし。
・少陰病、惡寒而踡、時自煩、欲去衣被者、可治
『素門・至真要大論』には
”各種の寒による収縮、ひきつりは全て腎に属す”と書かれている。
少陰病は腎陽が虚微になって水寒が内盛している状態であるから、
手足を縮めて身体を横にするのである。
煩は熱証に属す。そして甚だしければ衣服を脱ぎたがるが
これは少陰心陽がまだ虚しておらず、
真火が上方に浮いて水臟の病が現れているからである。
陰病で陽がまだ衰えていないので
必ず治るというのである。
提要:
少陰病で心陽が虚していない者は必ず治ることを述べている。
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、悪寒があって踡臥し、
しょっちゅう煩熱を感じ、身にまとっている衣服や
布団を脱ぎたがる場合は、治癒させることができる。
二百九十章
少陰中風、脉陽微陰浮者、爲欲愈。
和訓:
少陰中風、脉陽微に陰浮なるものは、愈えんと欲すと為す。
・少陰中風、脉陽微陰浮者、爲欲愈
風邪が少陰経に中った場合を少陰中風証と言う。
「陽微陰浮」は寸口脈が微、尺中脈が浮であることを表している。
風邪は陽邪であるから、表を襲えば寸口は脈浮、
裏に入れば尺中は脈沈となるのだが、
ここでは尺中は沈ではなく浮脈を示している。
これは少陰の陽気がいちじるしく充実し、
邪に抵抗して表に欲達していることを表す。
また寸口の脈微は邪の勢いが衰えていることを表すのである。
つまりこの脈により、邪気が衰えて正気が回復しようと
していることがわかるので「爲欲愈」であると述べている。
提要:
少陰中風証の欲愈する場合の脈証について。
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病中風証で、寸脈が微で尺脈が浮であれば、
正気が勝ち邪気が衰えたことを反映し、
これはやがて疾病が癒える徴候である。
二百九十一章
少陰病欲解時、從子至寅上。
和訓:
少陰病、解せんと欲する時は、子従り寅の上に至る。
・少陰病欲解時、從子至寅上
昼夜の交錯は陰陽の消長により為される。
足少陰腎経は水臟で、
この水臟中の貴重な真陽は少陰の熱力によって生じる。
午前0時は陰が尽きて陽が生じる時刻であり
陰中の陽を為す。
つまりこの時間帯は少陰本気の生化を助けるので
病もこの時間帯によく治るのである。
提要:
少陰病が治る時間帯について。
『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病が、快方に向かう時刻は、
夜の十一時から翌朝五時の間であることが多い。
参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』 績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社
生薬イメージ画像:為沢 画
※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。
為沢